私は教室でのレッスンだけではなく、
オーケストラや室内楽での演奏の仕事も
しています。
仕事中に困ることがないように、
普段から楽器のメンテナンスは欠かせません。
それでも、仕事中に
楽器に不具合が出ることはあります。
特に不具合が出やすいのが真夏と真冬です。
ヴァイオリンやヴィオラといた弦楽器は
ヨーロッパ発祥の楽器なので、
やはり日本の四季には適していないな〜、と
毎年感じています。
たとえ不具合が起きてしまっても、
仕事を途中で投げ出す訳にはいきません。
最初は戸惑いましたが、
経験を重ねるうちに
対策できるようになってきました。
今回は
真夏に起きやすい演奏中の楽器の不具合と
その対処方法についてお話します。
少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。
1、会場の湿度問題
このブログでも何回もお話してきましたが、
弦楽器に水分は大敵です。
直接水がかかるのは当然大問題ですが、
湿度が高いというのも楽器に良くありません。
そのため、ご自宅で練習される時や、
楽器を保管する場所の湿度の管理は
しっかり行って頂きたいことの一つです。
自分で湿度が管理できる場所は良いのですが、
困ることがあるのは本番や練習の会場です。
本番で演奏する大きなコンサートホールは
大丈夫なのですが、
問題は練習で使う会場です。
オーケストラも室内楽も
いつも本番と同じ会場を使って
練習しているわけではありません。
コンサートホールの中の練習室の他に、
区や市の施設の練習室や
体育館を使うこともあります。
コロナ禍になってからは、
ワクチンの接種会場として利用されていたり、
換気の問題もあって、
以前と同じ会場が使えないことも増えました。
こんな状況でもオーケストラや室内楽は
場所を探して練習しなくてはいけません。
普段はあまり行かない会場に行くと
涼しいのにとても湿度が高いことがあります。
湿度が高い場所での演奏は本当に大変です。
練習は数時間なので
楽器が壊れることはありませんが、
チューニングを何回しても音程が狂います。
そして、楽器の木や弦が湿気を吸って
いつもより振動しなくなるので、
楽器が響かなくなってしまいます。
かなり困ることなのですが、
これは会場に行ってみるまでわかりません。
このような状況を対処するためには
普段から楽器のメンテナンスを
しっかりしているか、が重要です。
まず、湿度が高い場所では
楽器の音程がどんどん下がります。
そのため、ペグとアジャスターを
たくさん巻くことになるのですが、
普段からペグが硬く巻きにくい状態だと
この状況に陥った時は本当にお手上げです。
いつも以上にペグは動かないので、
他のメンバーがチューニングが終わっても、
一人でいつまでもペグと格闘しなくては
いけなくなります。
アジャスターも
あと少しで一番下まで巻ききってしまう
ような所で放っておくと、
湿度の高い場所ではあっという間に一番下まで
巻いてしまうことになります。
ペグもアジャスターも
いつも使いやすい状態にしておけば、
急に湿度の高い場所で演奏することになっても
ある程度対処することができます。
一人だけチューニングに時間がかかったり、
無理に巻いて弦を切ってしまわないように、
普段からしっかり調整しておきましょう!
そしてもう一つ、
楽器が響かないと感じた時に気を付けたいのは
ひき方を変えないことです。
いつもと違う音が楽器からするので、
焦ってしまうこともあると思います。
でも、響かないからといって、
力んでしまうのは良くありません。
響かせるためにいつもより力を入れてしまうと
雑音が増えるだけで良い音は鳴らないのです。
それどころか、いつもと違う力加減でひくと
フォームが崩れたり、
身体を痛めてしまうこともあります。
湿度が高い場所で演奏して
『いつもより音が響かないな』と感じたら、
いつもより少し力を抜いてひくくらいが
丁度良いと私は思っています。
どうしても『鳴らそう!響かせよう!』と
必死になってしまいやすいので、
普段よりも力を抜いて
いつも通りにひくことを心がけてください。
そして、湿度の高い場所で演奏した後は、
家に着いてからの楽器の調整が必須です。
いつも以上に巻いたペグやアジャスターを
元に戻しておかないと、
湿度がいつも通りになった時に
弦が切れてしまうことがあります。
家に帰ったら
楽器をチューニングしてください。
一気に状態が元に戻るわけではないので、
何回かチューニングすると良いでしょう。
駒が傾いていないかも確認してください。
毎日起こることではありませんが、
その状況になるとかなり困ります。
日々のメンテナンスが大切なので、
普段から自分の楽器を気にしてくださいね。
それでは、また🌸
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